どんな特効薬でも薬には、必ず多かれ少なかれ副作用はあります。副作用とは、治療に有効な作用とともに起こる人体に良からぬ作用のことです。
副作用を起こしやすい体質というのもあります。基本的に薬に弱いアレルギー体質の人、肝臓や腎臓が弱い人、高齢者、多くの薬を同時に服用している人等がそうです。
副作用というと、全く別の症状を誘発するものと思いがちですが、薬の有効成分が効き過ぎて起こる症状もまた副作用なのです。高血圧の薬の副作用には、いろいろなものが報告されています。
動悸、顔面のほてり、頭痛、空咳、発疹、頻脈、倦怠感、味覚障害、睡眠障害、食欲不振、吐き気、手足のむくみ、歯肉の腫れ、肝機能障害等と多いものです。
薬が効き過ぎて血圧が下がり過ぎて起こる副作用としては、めまい、ふらつきがあります。不測の事態に備えて、車の運転や危険な作業をしない等の注意が必要です。
体調によっても起こりやすい副作用もありますので、医師に十分相談して服用しましょう。
特に他の薬を服用中の場合は、重大な影響もありえます。また、グレープフルーツとの相性が良くありません。
グレープフルーツには、減圧効果を高める成分が多く入っているのです。ジュースにしても、高血圧の薬と同時に飲んでは、血圧が下がり過ぎてしまうことがあるのです。
このように高血圧を薬で治すのは、簡単な面もありますが、いろいろな問題も発生しやすいのです。薬によらずに治療できれば、それに越したことはありません。
高血圧の薬とグレープフルーツ
グレープフルーツと高血圧の薬は、バッティングするというのは、聞いたことのある人も多いでしょう。医師からも指示がありますし、薬を受け取る際に薬剤師からも念を押されるものです。
それは総論的には正しいのですが、全てにおいて正しいともいえません。オレンジ、ミカン、レモン、夏みかん等の似たような柑橘類にはないのに、グレープフルーツだけが問題にされています。
グレープフルーツのどこが高血圧の薬の邪魔をするのか、どのような悪影響があるのかは詳しく知っておくべきです。
グレープフルーツの問題点は、その成分中のカリウムの多さです。カリウムは、血圧を下げる成分なのです。ですからそこに高血圧の薬が入っては、血圧の下がり過ぎが起こるかもしれないのです。
さらに、高血圧の薬が体内で分解されるのを防ぐ成分も含まれているのです。そうなると血液中に高血圧の薬の成分が予定より多くなるのです。これもまた、血圧の下がり過ぎを起こす原因になるのです。
血圧は下がり過ぎてもいけません。めまい、立ちくらみ、眠気を起こしますから、運転中等の時と場合によっては危険な状態になるのです。
特にその影響を受けやすい高血圧の薬は、カルシウム拮抗薬です。カリウムの影響を受けやすい薬だからです。
このような高血圧の薬を処方された場合は、グレープフルーツはもちろんカリウムを多く含む食品を摂り過ぎないことです。
グレープフルーツであれば、もちろんジュースを飲むのもいけません。むしろ、食べるより多量に取ることになるでしょう。
高血圧の薬が効かない原因
高血圧と診断されて、処方された降圧剤を服用しても効果が現れないこともあります。通常は、そこで別の降圧剤を服用することになります。ところが、それでも何の効果も現れない時、疑ってみるべき病気があります。
高血圧には、様々な原因があるのです。その9割は、原因不明の本態性高血圧といわれています。降圧剤の効かない高血圧原因で分かっているものに、以下のようなものがあります。
副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの分泌が通常より激しく行われることによります。その原因は、ホルモンを分泌する脳下垂体や副腎に良性の腫瘍ができることにあります。
小さな腫瘍でも発症しますので、事例も割と多く発見も見過ごされやすいものです。比較的30代、40代あたりの女性に多いものです。
原因はクッシング症候群と同様のものです。副腎皮質ホルモンであるアルドステロンの分泌が通常より激しく行われることによります。これにより体液の量が変化して血圧が上昇するものです。
これらは外見から判断することは難しく、CT検査や血液検査により発見されるものです。進行すれば症状として筋肉が細くなり筋力が低下したり、皮膚の毛細血管が見えやすくなる等です。
さらに進行すれば、心臓肥大にまでなることもあるようです。その前に原因となる腫瘍を発見し取り除いてもらうことです。その後、ホルモン治療を続ければ、再発も防げるようです。
高血圧の薬をやめるには
高血圧と診断されて高圧剤を服用するようになったら、一生飲み続けることになるといわれます。それは、降圧剤で下がっている血圧が途中で中断することにより、再び上昇するからです。
この場合、血管は急激な血圧の上昇に耐えられないおそれがあるのです。その可能性は、降圧剤を服用していない時に比べてはるかに高くなるのです。
ですから、降圧剤をやめると重篤な事態を引き起こしかねないから、やめられないといわれるのです。
また降圧剤はそのようなものですから、あまりにひどい血圧になってから薬を始めないことも大切です。高血圧の度合いによっては、降圧剤も種類も量も増えてしまいます。
心疾患等の症状が出てからの服用は、多めの薬が処方されるものです。そうすると、ますますやめた時の悪影響が顕著に現れやすくなるからです。
「降圧剤を始めたら死ぬまで飲み続けることになるかもしれない、そうすると経済的にも負担がかかる」と思って病院に行かない人もいます。
ですが、早めに受診しておけば、降圧剤の種類も量も負担のかからない程度ですむものです。そうであれば、やめた時の影響も小さくてすむのです。
もしも降圧剤をきっぱりやめたいのであれば、やめても血圧が上昇しない程度に安定してからです。これには、食生活の改善が求められます。
高血圧の治療を降圧剤に頼っているだけでは、確かにすぐにはやめづらい薬ではあるのです。食事から見直していけば時間はかかりますが、降圧剤からも解放されることでしょう。
酒は高血圧の薬にもなる?
アルコールは血圧にどのような作用をもたらしているのでしょうか?酒に弱い人は、ちょっと飲んだだけで顔が真っ赤になります。心臓もドキドキし始めると言います。
それでは、さぞかし血圧も上がっているだろうと思われます。確かに交感神経を刺激し血管は縮んで心臓も活発に動きます。
さらには、腎臓でのマグネシウムやカルシウムの排出を促進することによっても、血圧は上がる要因になっています。
ですから、酒に弱くなくて毎日のように飲んでいる人も、少なからずその影響を受けて血圧は常人よりも高いものなのです。
それでは、高血圧の人は禁酒をすれば良いかという訳でもありません。「酒は百薬の長」と言われる通り、何の症状にでもほどほど飲んでいれば薬になるのです。高血圧もまた例外ではありません。
酒を全く飲まない人は、飲む人より動脈硬化による疾患になる率が高いようです。
酒の持つメンタル的なリラックス効果も背景には考えられます。いつも緊張状態では、血圧も上がる傾向になるでしょう。
酒を飲んでいれば、日中の血圧は高めにはなりますが、その分、夜中の血圧は低めになることも分かっています。平均値を取れば、あまり変わりはないようなのです。
気分が良くなる程度の酒であれば、毎日飲むのは高血圧にも良い薬といえます。飲み過ぎさえしなければ気を付けるのは、おつまみにあります。
酒のつまみといえば、塩辛い物が相場です。これを摂り過ぎては、さすがに高血圧に拍車をかけるだけです。
高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会
高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会は、2013年に設置されました。
その目的は、具体的な社会問題からの要請によります。降圧剤バルサルタンに係る臨床研究の成果に信頼性が疑問視されたのです。
そこには研究者の利益も絡んでいることも疑われています。そこで事件の状況調査と対応策を検討するとともに、同様事案が生じないような対策を検討することにあります。
臨床研究の質を向上させ、その信頼性を回復させるための具体策も検討しています。
調査検討の結果は、以下の通りです。まず、今回の臨床研究は高血圧症治療薬の課題を追求したものとは言えません。よって被験者への課題もあるものでした。
それは、降圧剤バルサルタンを販売しているノバルティス社が関わったことによるものでした。さらに大学側も利益の供与を受けていることの問題もありました。
研究結果データを修正したりしていないとの説明は、大学側もノバルティス社もともに不十分と言えます。臨床研究の責任者も責任者としての責務を果たしているとは言えません。
倫理審査会の役割も機能していませんでした。研究資料も廃棄されており、十分な検証もできなくなっています。
今後の対策としては、以下の通りです。まず、臨床研究の信頼を回復させるため、必要な法制度を整備します。さらに、臨床研究の質を維持することと被験者を保護することです。
大学等の研究機関と製薬企業とのクリーンな関係の維持管理体制を整えます。製薬企業のガバナンスの向上にも努めます。その他必要な事項はないか、今後も継続して活動を続けます。