健康診断で高血圧といわれても、何の症状もありません。それでも、健康診断では必ずチェックされる項目です。
それは高血圧があらゆる病気に繋がるからです。それも重篤な病気ばかりなのです。しかし直ちに、そのような病気になるというものでもありません。毎日一歩ずつ病気に近づけているのが、高血圧なのです。
にもかかわらず放置していると、寿命は平均10年は縮むものと認識しておくべきです。それだけ重篤な病気が待ち受けているのです。
具体的には以下のようなものが挙げられます。
脳血管障害には、脳内出血、脳梗塞があります。突然、発症するのが厄介でもしも命は拾っても寝たきりになったりリハビリ生活を強いられたりもします。これでは生活の質を著しく低下させざるを得ないのです。
循環器系の臓器障害には、心疾患、腎障害、大動脈瘤、動脈硬化症等もあります。心疾患には、心肥大、狭心症、心筋梗塞があります。心筋梗塞も突然死の主な要因になっています。
腎機能障害には、腎障害、腎硬化症があります。網膜の毛細血管から出血して視力障害を起こすこともあります。勃起は血液が集まらないと起きませんから、勃起不全も起こることがあります。
これらは全て高血圧により、血管の柔軟性が失われたことによる血流の障害が原因です。さらに高血圧になると、糖尿病の発症率が2~3倍にも高くなることも分かっています。
高血圧症を放置して症状が重くなってくると、意識障害、失語症、記憶障害等の神経系の障害も引き起こします。
脳梗塞における高血圧症のガイドライン
脳梗塞は、一度発症しますと再発しやすくなるものです。同じ部位に再発することもありますが、発症する度に発症部位も違ったりすることもあります。
すると、体への機能障害も新たなものが追加されたりしますので負担もより大きくなります。再発防止には、血圧のコントロールが最も必要とされています。
収縮期血圧が160mmHg以上でも拡張期血圧が95mmHg以上でも、脳梗塞の発症は通常の3倍以上にもなるようです。脳梗塞慢性期においての高血圧ガイドラインによる目標値は、高くても140/90mmHgとされています。
ただし、両側頸動脈高度狭窄例や主幹動脈閉塞例、ラクナ梗塞や脳出血のような重篤な症状があった場合では、目標値はさらに下げる必要があります。
治療は、3ヶ月くらいの計画でゆっくり降圧させていくべきとされています。急な血圧の低下も血管にはダメージを与えて脳梗塞を再発させることがあるからです。
脳梗塞慢性期における降圧剤の違いによる有効性の違いは、研究されてはいますが現在のところ、はっきりとはしていません。
ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)、カルシウム拮抗薬、利尿薬等が使われます。
これらのどの降圧剤においても、あるいはこれらを組み合わせることによっても脳梗塞再発リスクは約30%とされています。これは同じ高血圧の脳への合併症である脳卒中においても、ほぼ同様の結果となっています。
糖尿病における高血圧症のガイドライン
高血圧で糖尿病を持っている人の治療は、糖尿病に与える影響を考えながらの治療になります。糖尿病ですと、糖や脂質の代謝に異常があるため血液中の糖分が高い状態になっています。
これを下げるためにインスリンが分泌されるようになっていますが、それでも血糖値は下がらなかったりするのです。
糖尿病の人が降圧剤を服用しますと、血糖値が分かりにくくなり、糖や脂質の代謝も悪化することもあるのです。
高血圧に糖尿病が重なりますと、高血圧による合併症状も起こりやすくなりますので、特段の注意も求められます。
高血圧治療ガイドラインでは、以下のような糖尿病の人でも服用できる高血圧の薬を示しています。そのメカニズムによって、次の2種類に分けられます。
・血管を拡げる作用のある薬:カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB
・血液中の水分を排出する作用のある薬:利尿薬
このうちまず服用させている薬は、以下の2種類があります。どちらも糖尿病の発症を抑制する効果もあります。
・ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬
血管を収縮させて血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡという酵素の発生を抑制するものです。インスリン抵抗性を下げてくれますので、インスリンによる血糖値の低下作用が改善されます。
・ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
血管を収縮させるアンジオテンシンという成分の受容体を抑制させることにより血管を広げるものです。腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制することにより、腎機能も改善します。
次に選択するべき薬は、以下の通りです。
・カルシウム拮抗薬
血管を収縮させるカルシウムを制御するものです。高圧効果も高く、糖や脂質代謝への影響はありません。
・利尿薬
腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制することにより、排尿を促して水分を減らすことにより血液を減らすものです。むくみ等にも効きます。インスリンの分泌が減りますので、血糖値が下がりにくくなることがあります。
高血圧と歯周病
高血圧の原因には、塩分や脂質の摂り過ぎを始め、肥満、高齢、ストレス、それに運動不足と様々です。個別に特定するには、難しい面もあります。
高血圧の人には、歯周病の人もいます。この歯周病も高血圧の原因になっているのが、分かってきました。
しかし、歯周病になったら高血圧になるというのは、話が飛んでいるように思えます。歯周病というのは、歯茎等に住み着いている歯周病菌によるものです。
この歯周病菌というのは、単独で働くものではなく複数の種類の菌が混在して複合感染をさせるのです。歯と歯茎の隙間には、食べかすや汚れが残ります。そこにこの歯周病菌が入り込んで、歯周病になるのです。
歯周病菌は、一つの抗生物質だけでは完治しない面倒な菌なのです。大人になると、口腔内に居座り続けることになります。
歯周病菌は、広がるばかりで収束しません。今や、世界中で確認されているのです。つまり歯周病で困っている人は、世界中にいることになります。
歯周病菌が体に広がることにより、体全体の免疫力を低下させていきます。全身に炎症を広げさせるのです。炎症は血管を硬くさせます。こうして動脈硬化が起き高血圧になるという仕組みです。
これを防ぐには、毎回食事の後には歯を磨くことしかありません。歯と歯茎にいる歯周病菌が全身を駆け回るようなことにならないよう、口腔内を清潔に保ちましょう。
エチケットの問題だけでなく、高血圧の問題でもあるというのが、お分かりになったでしょう。